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傷の治り方

われわれの皮膚は、外敵から身を守り、内臓を保護し、古くなると脱落して新しい細胞に置き換わっていきます。皮膚はまことにうまい仕組みになっていますが、この皮膚の損傷が「傷」です。

それでは傷はどのように治っていくのでしょうか。

傷の治癒を詳しく調べると、つぎの3つのステップがあることがわかりました。

  1. まず血小板(けっしょうばん)の凝集と血管収縮で血が止まります。
  2. つぎにマクロファージ、すなわち貪食(どんしょく)細胞が創面の死んだ組織を取り込んできれいにします。
  3. それから繊維芽細胞が分泌するコラーゲンを主体とした肉芽(にくげ)組織による修復が始まります。
  4. 肉芽組織が瘢痕組織へと変化し、安定した傷になります。

それでは、傷が治っていく様子,すなわち創傷治癒の過程を、上の例にならい3つの時期にわけてもうすこし詳しく説明します。 なお、ここでは説明の便宜上3つの時期に分けていますが、実際はそれぞれの過程が互いにオーバーラップしながら進行していきます。

■第一期:炎症反応期

皮膚が損傷を受けると、まず皮膚が断裂して組織の破壊が起こります。血管も断裂して局所に出血します。 血液に含まれている血小板は、断裂した膠原繊維に付着すると活性化し、その活性化した血小板はさらに他の血小板を付着させ活性化します。 活性化した血小板から放出される凝固因子の働きで、血液成分の一つであるプロトロンビンがトロンビンに変わり、そのトロンビンの作用でフィブリノーゲンがフィブリンになります。 このフィブリンがさらに血小板、赤血球等を巻き込んで血栓を作ります。同時に血管の斷端も収縮します。これが止血作用です。

このように血液の中には、色々な凝固因子が前駆状態つまり不活性の状態で存在していますが、損傷をきっかけに、次々に活性化の連鎖反応を起こすのです。 この現象は血液凝固のカスケードと呼ばれています。

凝固時の血小板からは凝固因子以外にも色々な化学物質が放出されます。 また、破壊された色々な細胞の細胞膜では、アラキドン酸系の連鎖反応が起こり、ここでも色々な化学物質が放出されます。 これらの化学物質が周囲の組織に浸透して、異変が起こったというシグナルを送ります。

このシグナルに刺激されて毛細管の壁を作っている内皮細胞の間にすき間が生じ、リンパ球、多核白血球、単核球が浸出液として血管から抜け出して傷口へと移動します。 これを遊走といいます。

リンパ球、多核白血球、単核球のうち、創傷治癒で一番重要なのは単核球です。 単核球は破壊物を取り込む、いわゆる貪食作用によってマクロファージ(=貪食細胞)となり、これがさらに色々な化学物質を放出して、次のシグナルの発生源になります。

以上が第一期(炎症反応期)の生化学的な説明ですが、この時期にわれわれが傷口を見たとき目にしたり体に感じたりする症状にはつぎのようなものがあります。

  1. 浸出液で組織が腫れます。これを腫脹といいます。
  2. 毛細管の拡張で赤くなります。これが発赤です。
  3. 組織反応で熱を生じます。つまり発熱です。
  4. 末梢神経が刺激されて痛みを感じます。疼痛です。

この、腫脹、発赤、発熱そして疼痛を、炎症の4主徴といいます。 炎症というのは細菌によって起こる感染や、化膿もその一つですが、正常な創傷治癒の初期過程にも見られる大切な生体反応なのです。 これがほぼ受傷後4,5日の過程です。

■第二期:増殖期(肉芽形成期)

第一期のマクロファージ(=貪食細胞)の活動で放出された物質が刺激となり、線維芽細胞が呼び寄せられ、修復の主な材料である膠原繊維(コラーゲン)が生み出されます。 また血管内皮細胞に対して血管を新生する指令もマクロファージから放出されます。

繊維芽細胞の産生したコラーゲンに支えられて毛細血管が発達し、そこへ流れ込む新鮮な血液が線維芽細胞に栄養や酸素を供給し、更にコラーゲンの産出をうながすという自己増殖のサイクルが構成されます。

このように繊維芽細胞、毛細血管がコラーゲンを足場とし、この3者が支えあって共同作業を行い、いわば軍団のように傷口へ進出し、欠損部を埋め創面をくっつけます。

この欠損部を埋めていく軍団のような組織を肉芽組織といいますが、肉芽組織はコラーゲン以外の色々な物質やコラーゲン間の架橋などで結合補強しあい、だんだんと真皮に近い丈夫な組織になっていきます。 この状態を瘢痕組織といいます。 肉芽組織が瘢痕組織に変わっていき、皮膚の強さが正常になるには二週間から三週間かかります。 この時期はほぼ1,2週間続き、次の第3期に移行します。

■第三期:安定期

やがて線維芽細胞の活性が落ちてコラーゲンの生成が少なくなります。 そのうちコラーゲンの生成量と分解吸収量が同じになり、見た目には安定して変化がない状態になりますが、実際は生成と分解がバランスよく行われているのです。 この状態を安定期といいます。

生成と分解のバランスが崩れると、例えばビタミンCの欠乏などでコラーゲンの産生が低下すると、分解吸収量のほうが多くなって瘢痕組織が吸収されてしまい、結果的には傷が開いてしまいます。 このように瘢痕組織は見た目には変化がなくても、常に生成と分解を続けている活動中の組織なのです。

こうして再生した表皮細胞の下の組織は、真皮に置き換わるわけではなくて、いつまでも瘢痕組織として残ります。 つまり第3期は傷跡として永久に続くと考えてよいでしょう。 再生した表皮は傷を受ける前とほとんど同じになりますが、瘢痕組織はコラーゲンの配列が不規則なので、表皮を通してみた場合、真皮とは多少違って見えます。 これが「傷跡」です。 つまり実際に患者さんが気にすること、すなわち色が違うとか、傷の幅とか、凹んでいるあるいは盛りあがっている,などの事柄は表皮ではなくて、ほとんどが真皮レベルの瘢痕組織の問題なのです。 したがって、これからの創傷治癒の課題は、瘢痕組織をなくしてしまう事ではなくて、瘢痕組織の量を減らし、なおかつこれを正常の真皮に近づける事と思われます。

こうして三つのステップをフォローしてわかることは、それぞれのステップがつぎのステップへの準備であり、ひとつのステップが完了するとつぎのステップに開始のシグナルが送られるということです。

各ステップの作業はその役割をもった色々な細胞がおこなうのですが、面白いことに一つの細胞はそれぞれのステップに応じて変容し、一人二役も三役もするようになるのです。  生体はこのようにまことに効率の良い連鎖反応により傷を治していくのです。

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