傷と治療の知識

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スカーレスヒーリングの概念

ここでは、「傷をなるべく目立たせない」という視点で、いろいろな方法を紹介します。

「スカーレスヒーリング」とは、厳密には、「瘢痕のない傷の治癒」ということになりますが、それには瘢痕組織ではなく再生組織によってキズが治る必要があります。

しかしこれは現段階では動物実験のレベルで研究が進んでいますが、まだ臨床レベルでは可能になっていません。

したがって現時点では瘢痕なしに傷を治すことは不可能です。

人間の表皮細胞には再生能力があり、適切な環境下において、外傷などで失われた表皮は再び増殖しますが、真皮や皮下の失われた組織は線維芽細胞の増殖やコラーゲン線維を多く含む肉芽によって修復されていきます。このとき、傷の間を埋めている細胞外基質そのものを瘢痕と呼びます。これらは傷の大小、損傷部位の広い狭いにかかわらず必ず必要なものです。

つまり瘢痕組織の増殖がなければ傷はくっつくことが出来ず、失った部分を埋めることが出来ないのです。

スカーレスヒーリングの実験研究については別に述べるとして、ここでは臨床レベルでどのように傷を目だたたくする努力がされているか述べることにします。

正常に治った傷あとはほとんど目立たず、痒みや痛みなどの自覚症状はありません。しかし、このとき傷あとの異常として、肥厚性瘢痕やケロイドがあります。

傷が治る過程で瘢痕の増殖が異常に亢進する結果、傷あとが赤く盛り上がってきたり、その部分に痒みや痛みを伴ったり、特に目立つ部位では、見た目に非常に気になります。実際にケガのあとや手術のあとが、とても目立って気になったり、自覚症状に悩まされたりしている方が多いということも事実です。

このような肥厚性瘢痕やケロイドの発生原因は十分に分かっていない部分もありますが、一度出来上がってしまうと患者さんとしては、ずっと悩んでいくこととなってしまいます。

そこで出来るだけこのような肥厚性瘢痕が生じないように、傷あとが目立たなく治ることを目指した治療が考えられています。

このような傷あとが目立たない治癒(瘢痕を認識できない創傷治癒)という意味でスカーレスヒーリングと表現されることもあります。

スカーレスヒーリング(目立たない傷あと)を目指す創傷治療のポイント

  1. 1. 正しい創傷治療の実施(早い創傷治癒を目指す)

    正しい治療を行い、傷を早く治すことは、スカーレスヒーリングにつながる第一歩

    外傷の治療
    ‐異物の存在や創傷治癒の遅延は、肥厚性瘢痕の形成条件となる‐
    異物・壊死組織の除去‐異物や壊死組織は肥厚性瘢痕の原因となる‐
    創面の洗浄‐細菌の感染は炎症を起こし肥厚性瘢痕の原因となる‐[消毒では感染は防げず、創面組織への傷害性が強く傷の治癒を遅延させ、肥厚性瘢痕の原因となる。]
    湿潤環境の保持‐創面の乾燥(カサブタ)は、表皮細胞の増殖を妨げ治癒を遅らせ、傷あとが目立つ原因となる‐
    手術時の切開創への工夫
    ‐創面の二次治癒化、表面の糸の締めすぎは瘢痕が目立つ原因となる‐
    切開の方向‐皮膚の割線に垂直方向の切開を避ける‐
    真皮縫合‐癒合部瘢痕にかかる、張力による創の開大を防止する‐
    皮膚縫合‐表面の段差合わせ、強く締めすぎないことで、縫合糸痕を回避する‐
    抜糸時期‐早めに抜糸することで縫合糸痕を回避する‐
    抜糸後のテープ固定‐瘢痕の開大や隆起の防止‐
  2. 2. 初期症状からの対応と出来たものの治療

    肥厚性瘢痕は、より早期から増大を防ぐことがポイント、その後の治療においては併用が基本

    肥厚性瘢痕の初期症状に対しての対応
    ‐肥厚性瘢痕の治療は、出来てからではなく、初期症状からの積極的な治療が重要‐
    固定、圧迫、保湿‐テープ固定の継続、圧迫療法、保湿剤などの使用‐
    内服治療剤の継続投与‐継続した増殖因子の抑制による増大傾向の改善‐[赤みや痒みといった症状が持続するような場合には、その時点で治療を開始することが望ましい。]

    肥厚性瘢痕の治療

    ‐出来上がった肥厚性瘢痕は、各種治療法の併用を‐
    内服治療剤の継続投与‐増殖因子やケミカルメディエーターの抑制による自他覚症状の改善、全ての治療との併用可能‐
    外用剤・注射剤(ステロイド剤)‐軟膏・テープ・注射など‐
    圧迫療法‐外力による形態の矯正‐
    保湿材料(シリコンゲルシートなど)による治療‐保湿効果‐
    放射線治療‐ケロイド・高度肥厚性瘢痕の治療、手術との併用‐
    外科的治療‐手術による切除‐
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