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褥瘡(床ずれ)

褥瘡とはいわゆる床ずれのことです。
脊髄損傷や脳梗塞などで、寝たきりが続くと背中やお尻の皮膚がすりむけて、潰瘍を作りなかなか治らないことがありますね。
褥瘡という言葉は難しすぎますが、床ずれという言葉も決して良くない。何か、寝たきりになれば出来るのは当たり前といった感じを与えるからです。
そうではない、褥瘡は治療できるし、なによりも予防が大切というのがこのページで訴えたいことなのです。

褥瘡の発生頻度

日本では、褥瘡の発生予防、治療の取り組みが様々なされてきました。それに伴って、褥瘡を有する患者の割合は減少してきました。全国の病院、介護老人福祉施設、介護老人保健施設、在宅(訪問看護ステーション)を対象とした2016年の調査では、褥瘡を有する患者の割合は、病院で0.8~2.81%、介護老人福祉施設で0.77%、介護老人保健施設で1.16%、訪問看護ステーションで1.93%でした。これらの値は、世界的に見てもとても低い値です。しかし、褥瘡は高齢者に多くみられるため、今後ますます人口に占める高齢者の割合が高まる中、褥瘡を有する人も増加する可能性があります。

褥瘡の原因

なぜ褥瘡はできるのでしょうか。
皮膚が長時間圧迫されると、血液が途絶えます。一定時間、必要な酸素や養分の供給を絶たれると、細胞は死滅します。また、微小血管自身も血栓により閉塞し、これがさらに組織の懐死を招きます。この一連の変化には炎症反応が伴います。
圧迫が短時間ならば、皮膚は一時的に赤みを帯びるだけで、前述したような変化はやがて収まり、組織は息を吹き返し元に戻ります。この時点では、損傷はまだ可逆的です。しかし、圧迫が長時間続くと変化は非可逆的となり、圧迫を受けた部分の皮膚は完全に懐死に陥ります。実験的には、同一箇所に2時間持続的に圧が加わると褥瘡が発生するといわれています。健常人ならたとえぐっすり寝こんでいても、絶えず体を動かしているので褥瘡は生じません。通常、圧迫が続けば痛みを感じ、無意識にその部位を動かすからです。つまり知覚と運動という2つの神経機能が働いている限り、褥瘡は生じないのです。
この2つの機能が完全に失われるのが、脊髄損傷です。脊髄損傷で褥瘡を生じた場合、予防が難しく、治療によっていったんは治っても、再発を繰り返すことが多くあります。
同じ神経疾患でも、脳溢血の場合は多少異なり、完全に意識不明の昏睡状態の場合は別として、いわゆる「半身不随」になっても、自身で動けなくても、ある程度回復すれば痛みは感じることができるからです。
脊髄損傷や脳溢血のような病気がなくても、手術等によって長時間同一の姿勢で圧迫が続くことで、褥瘡が発生する場合もあります。
また、自身の体の重みで圧迫が加わることが原因となる以外に、機器の装着によって圧迫が加わることで褥瘡が発生することがあります。これは、医療関連機器圧迫創傷と呼ばれます。

褥瘡の好発部位

さて、褥瘡のできやすい場所はどこでしょう。
骨が出っ張っていて、寝ていて当たりやすいところというと、おのずと場所が決まってきます。まず仙骨のあたり。次が大転子そして腸骨稜、座骨といったあたりです。
そのほか肩でも膝でも、およそ骨のでっぱりのあるところなら、どこでも褥瘡と無縁のところはありません。

褥瘡の予防

褥瘡の予防で最も大切なことは、持続する圧迫を取り除くことです。そのため、自身で寝返りがうてない人には、姿勢を整えたり、姿勢を変えたり(体位変換)します。骨突出部に圧がかからないよう考えると、図のような体位がよいことになります。しかしこれでもやはり体位変換とリハビリは必要です。このままほっておくと関節が曲がったまま固まり、手足が伸びなくなると、体位交換も難しくなります。圧力を低くするために、褥瘡予防に適したマットレスや車いすクッションを使用することも重要です。病院のみではなく、施設や在宅でも、褥瘡を予防するのに適した体圧分散寝具が使用されるようになっています。さらに、褥瘡は腰や大腿部といった排泄物で汚染されやすい場所にでき、排泄物の刺激で皮膚が脆弱になり褥瘡が発生しやすくなるため、適切な排泄の管理も大切です。また、栄養状態がよくないことも褥瘡の危険因子となりますので、適切な栄養摂取も大切です。

褥瘡の治療

さて、褥瘡が発生した場合にはどうしたらよいでしょうか。
褥瘡の状態を正しく評価(アセスメント)して、最適な治療・ケアを選択することが必要となります。
褥瘡のアセスメントには、日本褥瘡学会によって作成されたDESIGN-R®が広く使用されています。これは、褥瘡の深さやサイズ、滲出液の量、肉芽組織や壊死組織を評価するものです。2020年にはDESIGN-R®2020に改訂され、DESIGN-R®の項目に「臨界的定着(クリティカルコロナイゼーション)疑い」と「深部損傷褥瘡(DTI)疑い」の2つの項目が追加されました。
臨界的定着(クリティカルコロナイゼーション)は、明らかな感染徴候がみられないにも拘わらず治癒が進まず、消毒薬/抗菌薬を使用することで治癒が進む状態で、目に見えない感染といえます。臨界的定着(クリティカルコロナイゼーション)を肉眼的に判断することは難しく、判断までに時間を要することが問題となっています。
深部損傷褥瘡(DTI)疑いは、肉眼的には浅い褥瘡に見えても、骨に近い深い組織が損傷を受けていることが疑われる褥瘡をさします。深部損傷褥瘡(DTI)では、急速に深い褥瘡になる可能性があるため、注意深く経過をみていく必要があります。
褥瘡の治療については、日本褥瘡学会から「褥瘡予防・管理ガイドライン(第4版)」が発刊されています。深い褥瘡の局所の処置としては、まず、感染の予防・管理が最も重要です。創の洗浄を行うとともに、抗菌作用のある薬剤や被覆材が使用されることもあります。壊死組織が残っていれば取り除きます。そして、適度に滲出液を吸収するよう、褥瘡の状態に適した薬剤や被覆材などを使用します。
最近では創傷治癒促進を謳って、様々な被覆材が開発されています。そのほとんどは高分子の膜で創面を閉鎖し、湿潤環境を保つことにあります。これは「モイストウンドヒーリング」という、近年の創傷ケアの基本的な考え方に基づいていますが、褥瘡治療に使う際には注意が必要です。正常、清潔、清浄な創面から出る滲出液には、傷の治りを促進するような化学物資が含まれています。これを逃さないようにし、創面の治癒に役だたせようというのがモイストウンドヒーリングの考え方です。注意しなければならないことは、感染を伴っている場合に傷を閉鎖すると感染を悪化させることになるので、そのような場合には傷を密閉してはいけません。

再発を繰り返す場合や、創傷が広範囲など自然にふさがりそうもない場合には手術が検討されます。筋皮弁は、皮膚のみでなく皮下脂肪、筋肉も一緒に移動する治療法で、筋肉を付けることで十分な血行を温存し、また皮下脂肪にクッションの役目をさせることができます。


仙骨部の褥瘡


充分なディブリードマンを行い


皮弁にてカバー

監修:真田 弘美
東京大学大学院医学系研究科健康科学看護専攻老年看護学分野教授
特定非営利活動法人 創傷治癒センター 理事

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