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最新情報

2003.8.11
AMDAスリランカ医療和平・巡回診療

先日、スリランカにて「AMDAスリランカ医療和平・巡回診療」に携わっている看護婦の井上さんより、野外の巡回診療における創傷処置のご質問とともに現地の様子を教えていただきました。万全の設備ではないため、ご苦労も多いそうですが、是非皆様にもご紹介させていただきたいと思います。

塩谷:現地はどのような様子ですか?

井上:こちらでは、小さな虫さされや、傷から感染して悪化させてしまう子供達が多くいます。どろだらけの足や手の傷で、汚いかさぶたの下に膿を持っていて、そこに、蝿がとまっている状態です。そして、入浴の習慣がなく、たいていの子供は裸足です。また、主に使用している共同井戸では、私達は飲料水として煮沸し濾過したものを使っていますが、現地の方はそのまま飲用しています。

塩谷:巡回診療はどのように行われているのですか?

井上:私達は現在、日本人看護師1名と調整員、そして現地スタッフと活動しています。そこで、一地域週一回の巡回を行っています。他の現地NGOが介入していることもあって、その地域の住民においては、週2回の診療が受けられると思います。また、どこから集まって来るのか、毎日各地域で150人前後の患者さんがいらっしゃいます。重傷者は思ったほどいないのですが、子供には呼吸器系疾患、女性には筋肉・関節の痛みを訴える患者さん、高齢者には高血圧の方が多いようです。カウンセリングや健康チェック感覚で毎週来所されている方もいます。

活動の一部の写真を添付しましたのでご覧下さい。
子供に多いのが足の裏の傷と、膝など下腿の擦り傷で、1ヶ月くらい前のものがまだ分厚いかさぶたで覆われ、すこしさわると中から排膿されることもあります。
足の裏の角質層は日本の子供より厚いようです。処置後は幅広のテープでぐるっと巻いています。(そのまま裸足で帰る子供さんもいるので)
2番目の写真の子供さんは、1週間前ほどに受傷し、自分で内服用のこな薬?を付けたと言っていました。

井上:そこで、早速ですが上記のように週に限られた診察しか受けられず、環境は砂埃がすごくて蝿がすぐによってくるような場合の創傷処置方法について伺わせて下さい。

現在の処置は、まずDettolという石鹸を少し付けて、流水で洗っています。現地Dr.の方針は、H202またはサブロンという商品名のオレンジ色の消毒薬で消毒後、ふきとって、イソジンゲルのようなもの(Betedine Cream)を塗布し、ガーゼをあてることです。私は本来はBetedineも使いたくないのですが、根本は現地に根付いた医療提供ですので、Dr.の意見を尊重しながら、スリランカ流の処置を試行錯誤していこうと思っています。
ちなみに、熱傷には「GENTAIN VIOLET」という青紫の消毒薬の指示でしたが、そのときは、流水にて洗浄のみ行い、病院へ行くための紹介状を書いてもらいました。(しかし、病院でも同じ処置かもしれませんが・・・)

塩谷:写真からも現地の様子が垣間見られ、いろいろ考えさせられますね。スリランカでのボランティア活動に敬服し、なにかアドバイスができればと思います。現地の医師はその環境で経験的に最良の方法を工夫されている面もあるので、必ずしも最先端にこだわらず、その方針を尊重してもいいかもしれないですね。現地の様子を正確には把握してないので思いつくままに一般論でご説明させていただきます。現地ではいろいろ制約も多いと思いますので、治療はできるだけフレキシブルに考える方がいいですね。

井上:ありがとうございます。小さなNGOですので、あいにく日本のようなドレッシング材は購入することができません。ラップなら購入可能と思いますが。(こっそりと家庭用ラップを処置箱に忍ばせました。)しかし現地にて、ラップを使用することはなかなか受け入れられないことが予測されます。そこで、洗浄後、消毒薬の代わりにワセリンか抗生剤入り軟膏を塗布し、ガーゼ保護にすることも考えているのですがどのように思われますか?。(しかし、当分今の処置のままになりそうですが・・・。)また、可能な場合、我々がいま所持している抗生剤入り軟膏は、すべて発疹など皮膚疾患/眼疾患用なのですが、これを創部に使用してもいいでしょうか? (例:Soframycin Ointment,Gentamicin Eye Ointment)

塩谷:具体的には現地の衛生状態など察すると、ある程度の消毒薬や抗生物質入りの軟膏の使用もやむを得ないのではないかと思います。ラップ療法は実は私はあまり経験がありません。モダンドレッシングがあるのに、わざわざラップを使わなくともという単純な考えです。そして今の場合は皮膚の状態、あとのファローを考えると、ラップはリスクがあるかなという気がします。
また、サイトに述べているモイストの考えは、傷を早くきれいに治すために現在最適と考えられていますが、設備や備品が整わない医療環境では、とりあえず感染を防ぐことが最優先になるかと思います。

井上:そうですね。現地Dr.は皮疹にはステロイド入りの軟膏を出すことが多いのですが、化膿しているところに洗浄後その軟膏をつけても良いと思われますか?

塩谷:ステロイド入りの軟膏は抗感染力を阻害するかも知れず、あまり望ましくないかもしれないですね。

井上:分かりました。古いかさぶたの中にたまっている膿はどのように考えたらよいですか?もし、明らかな切開が必要なほど腫脹がある場合には閉鎖療法は避けた方がいいですよね?(このような場合、Dr.はここで切開すると言われることもあるのですが、不十分な器具による衛生面の問題と、局所麻酔もないため、不必要な痛みを与えてしまうこと、事後の責任問題の点から、我々はできるかぎり医療機関受診を勧めています。われわれの組織のなかでも、この事柄は今後のおおきな課題です。)

塩谷:まず化膿創の処置の原則はやはり、排膿つまりドレナージと洗浄と考えてよいでしょう。かさぶたははがして、洗い流すことになります。皮下膿瘍でしたら切開は必要でしょう。その際、多少強めの消毒剤もやむをえないかもしれません。オキシフル、ベータディン等も含まれます。

井上:1週間前の擦り傷や虫さされを化膿して来るので、多少デブリの必要性があると思うのですが、局所麻酔や滅菌済みの切開セットなど何も持参していません。もちろん、現地医師の協力も必要で、出来る限りの洗浄と取りきれる範囲でデブリするのみですが、何かいい方法がありますか?やはり、キシロカインゼリー等を創部に使用することは危険でしょうか?

塩谷:化膿創で最も大事なのは排膿であり、そのため必要なのは切開であり、デブリは自然に任せてもかまわないです。

井上:こちらは医療費は全て無料ですので、行く手段さえあれば、通院に対する経済的負担は少ないようです。こちらの人々は、医師からの強い説得があればバスや知人を通してなんらかの形で病院に行くことができています。
予防的な健康教育が重要であると感じましたので、昨日現地語(タミール語)で書いた「傷を洗おう!」というリーフレットをつくり、明日から配布することにしました。

日々、洗浄の大切さを説得していますが、現地の方針に沿ってという兼ね合いもあり、すこしづつ保健教育をしながら、改善できたらいいと考えています。
こちらは、ほんとうにこどもの笑顔が素敵です。いつも逆に私のほうが元気を貰っていますが、現地の人々に、明日への希望と、自分の健康についてちょっとでも考えていただける援助ができたらなあ、と「こころ」担当の私は日々を過ごしています。
本当に、どうもありがとうございました。

塩谷:大変ですけれども、やりがいのあるお仕事ですね。
いささか保守的になってしまいましたが、一番大事なことは教条的に教科書的なことにとらわれず、いろいろ試されて、ご自分の目で観察され、比較検討され、現状にあった治療法を確立されることかと思います。人間には自然のすばらしいも治癒能力が備わっているので、まず、それを信じ頼ることが大切だと思います。

衛生状態、皮膚の状態さらには起炎菌も異なることが考えられ、こちらの常識では測れない面があると思います。いずれにしてもそちらの様子が正確には把握しきれていないので、アドバイスにならないかもしれませんが、基本的な考えなり目的をおさえて、あとは現場に沿って優先度をお考えください。
また、なんでもお知らせください。こちらも勉強になります。がんばってください。

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